【感想】デジタルファンフェスティバル2021(FinalFantsy XIV Digital Fan Festival2021)

FinalFantsy XIV Digital Fan Festival2021

2021年5月15日から16日にかけてFinalFantsy XIV Digital Fan Festival2021(ファイナルファンタジーデジタルファンフェスティバル)が開催された。

fanfest.finalfantasyxiv.com

制作会社であるスクウェアエニックスが主催する、ファイナルファンタジー14のプレイヤーを対象とした大型イベントで、2014年からおよそ2年に一度開催されている。

内容は次期大型アップ―デート(拡張ディスク)の発表や、吉田直樹プロデューサーを中心とした開発陣の講演、コスプレイベント、体験型ゲームなどバラエティに富む。
ゲーム業界関連のイベントとして個人的に特筆したいのは、その開催地。日本以外の複数の国で数日間に渡って開催されることもあり、第3回の2018-2019ではラスベガス、パリ、東京、上海で足かけ2年間に渡り実施された。

fanfest2.finalfantasyxiv.com
第4回である2021年は、新型コロナウイルスのパンデミックに伴い、オンライン上での開催となった。内容はすべてストリーミングで無料視聴可能であり、全世界の視聴者と共に同時参加できる形となった。

今回オンラインという形ではあるが、本イベントを初めて視聴した。結論から言うと、FinalFantasyXIVの制作スタッフが、ゲームを通してファンを大切にしてきたことの一端が分かる、とても素晴らしいイベントだった。

FF14というMMOが目指すもの

スマートフォンをはじめとしたテクノロジーや生活環境の変化によって、私たちの余暇の過ごし方も大きく変わってきた。2000年代以降、長い時間をかけてキャラクターを育てたり、アイテムやトロフィーを獲得するゲームモデルは数を減じた。代わりに短時間で完結し多くの人と関わることのできる即興的なゲームが、販売シェアの大部分を占めているように思われる。このような光景はアップルストアやGoogleplayの売り上げを見れば一目瞭然であろう。

家庭用ゲーム機についても傾向は同様で、多人数参加型FPSが流行する2020年代において、MMORPGというゲームモデルは古臭いものだという感想を持つ人も居るかもしれない。

こうした最中本作は、ウルティマオンラインやEverQuest等の1990年代の伝統的MMOから、World of Warcraftのような2000年代の新しいMMOへの変化に準拠しつつ、日本の新しいプレイヤーに遊んでもらうにはどうしたらよいかという点を誠実に追及しているように思える。

同時に、日本だけをメインのターゲットにしたゲーム制作の限界も強く感じているようだ。例えば今回のファンフェスティバルでも、開発陣が日本語で発言した直後、リアルタイムで通訳スタッフの英語翻訳が入り、2か国語での放送となっている。

その場のアドリブにも即座に対応する程の力をもった通訳スタッフが、ゲーム制作の現場のすぐ傍にいるという事実にも驚かされるが、日本の開発陣が自ら自分の言葉を英語に翻訳する場面も多々見られる。海外での展開を考えればすぐにわかることだが、FF14の日本の制作チームは既に二か国語に対応しているのだろう。

1日目 時期アップデートの内容に加え、開発パネル等コアなコーナーも

内容についても簡単紹介をさせていただく。

1日目は、吉田直樹プロデューサーの基調講演からスタートし、2021年発売予定とされていた大型アップデート、「暁月の終焉」ENDWALKERの発売日が正式に2021年11月23日に決定したことが発表された。それに伴い、事前告知されていた新しい近接DPSジョブ「リーパー」、ストーリーや新MAPなどの紹介がされた。

またこれまで女性だけであったプレイアブル種族ヴィエラに男性が追加されることや、オセアニア地方のデータセンターが新たに設置されることが明らかになった。
代表取締役を含めた開発陣の挨拶もあり、製作スタッフの和気あいあいとした雰囲気を感じ取ることができる。

その後はプレイヤー参加型イベントの「ハイデリン探検隊」、バトルチームを中心とした座談会「開発パネル」、モンクをメインジョブとする俳優神木隆之介とのトークイベント「直樹の部屋」、ピアニストKeikoのスペシャルライブで一日目が終了となる。

どれも見ごたえがあるが、開発パネルでの宮澤隆信、中川大輔両氏のプレゼンテーションは、明快で面白かった。最初に出てきたアイデアをゲームに落とし込んでいく制作の過程、思考のフローを言語化するプロセスが非常に洗練されていた。想像だが、社内では海外チームを含めた、異なる言語間でのプレゼンテーションも相当するあるのではないだろうか。

2日目 海外プレイヤーが楽しむFF14、開発スタッフのサービス精神

2日目はオープニングで専務取締役、橋本真司氏がFFシリーズのブランドマネージャーから退任し、新たに北瀬佳範氏が担当することが発表された。吉田プロデューサーより、FF14が「新生」される非常に大変な時期から共に仕事をしてきた経過が触れられ、花束の贈呈がなされた。

その後は第64回プロデューサーレター、「あなたの推しにミラプリしよう!」をみんなで見る会、Live Q&A、声優さんと振り返る名シーン、クイズ・ギルオネア!、スペシャルライブへと続く。
笑いあり、涙ありの非常に濃い内容だった。

個人的に触れたいのがクイズ・ギルオネア!で、欧米のプレイヤーで2チームに分かれ、蛮神戦を先に攻略したチームからクイズに回答するというもの。
ボイスチャットで「このギミックはなんだっけ?」「忘れた」などと会話しながら攻略する姿は、日本と変わらないようだ。
一方で、対戦相手にハンデを付けるために急にグループポーズの撮影を始めるなど、大らかなプレイスタイルも見られ、各国で様々な楽しみ方をされているのだと実感できる。

スペシャルライブの終盤では、サウンドディレクターの祖堅 正慶氏が闘病生活の中でパッチ5.0以降の制作にあたっていたこと、一部開発スタッフ以外にはそれが伏せられたまま制作が進行していたことが明かされた。
同氏は吉田プロデューサーがFF14に就任したころからのチームであり、先の橋本氏と同様に「新生」として立て直しを担ってきた仲間であるという。
なお現在は寛解に近い状態であるとのことであるが、吉田プロデューサーが当時の想いを涙で言葉を詰まらせる場面もあり、開発スタッフが強い結束と一体感でFF14を支えてきたことが垣間見える一幕であった。

FF14は開発スタッフとファンとで作っていく物語

新旧のMMOの歴史、日本と世界という言葉や文化の違い、様々なハードルをファンとの意見交換や交流を軸に超えていこうとする姿が、今回のファンフェスティバルを通してもしっかりと伝わってくる。
FF14は開発スタッフにとっても、またプレイヤーにとっても一つの大きな物語になりつつあるのだろう。
本作が世界各国で愛されており、今なお利用者を増やしている理由が良く分かる、とても楽しいイベントだったと思う。

2021年5月末現在、ストリーミングは無料でみることができる。
未視聴の方はぜひご覧ください。

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